『ちいかわ』もうなだれる中東情勢
中東とウクライナにおける紛争の情勢が、2025年を迎えたいま、危機的なまでにエスカレートしています。
メディアをにぎわすさまざまな事件や出来事の背後で、イスラエル軍(IDF)によるパレスチナの一般市民の虐殺はつづいていますし、ガザ市への空爆もつづいています。
そのため、パレスチナのイスラエルからの解放をめざす政治・武装組織ハマスの反撃も強まっています。
おなじく反イスラエルおよび反欧米主義をかかげた政治・武装組織ヒズボラもイラン政府のバックアップを受けながら反撃をしつづけています。
とくにイスラエルによるレバノンやイエメンへの無差別空爆による被害と悲劇はおさまりそうになくて、空爆から逃れようとする一般市民の多くが母国を捨てて難民になっているようです。
また、この空爆が戦争犯罪にあたるとしてイスラエルへの批判が集中しているようですけれど、ネタニヤフ政権はそんな非難の嵐を気にもとめることなく、一般市民への攻撃をやめる気配はありません。
シリアがこけたからハマス&ヒズボラ&フーシもこけちゃうの?
そして、2024年12月8日、シリアのアサド政権が崩壊しました。
ハマスやヒズボラなどの政治・武装組織を背後から支えているイラン政府にとって、シリアという国は彼らに活動資金と武器を供給するための大切なパイプラインの役割を果たしてきたとみられています。
ですから、アサド政権の崩壊によって、パレスチナの解放を支えてきたこれらの武装組織がともに孤立させられることになるのでは、といった見方もありました。
けれども、イエメンの親イラン反政府武装集団フーシなどは、2024年のクリスマス直前にも、弾道ミサイルでイスラエル第2の大きさを誇る都市テルアビブへの攻撃をつづけているようです。
ところで、中東といえばイラン・イラク・サウジアラビア・トルコ・イスラエル・エジプトなどですから、たとえば世界の国々に石油を供給している石油コンビナートがどこかの国や武装集団の発射したミサイルで破壊されたりしたら、世界の経済が大変なことになり、日本の経済も大変なことになり、わたしたちの日々の生活も大変なことになるでしょう。
イスラエル軍はついに核兵器による攻撃に手を染めたの?
そんな状況下で、2024年の12月16日、イスラエル軍(IDF)はシリアのタルトゥースにあるシリアの軍事施設への空爆をおこないました。
そのとき、核兵器をおもわせるような大爆発がおこり、その瞬間の映像がSNSの世界で拡散して「イスラエルは核兵器を使用したのでは?」というようなウワサが飛び交いましたが、専門家によると攻撃を受けた場所がかなりの大きさの武器庫だったためにあのような爆発がおこったのだ、ということのようでした。
地政学的にみて、イスラエルがいま核兵器を使用したら、イスラエルそのものの孤立と崩壊が早まるだけだとも言われています。
それに、各国の軍事衛星だけで合計76個もあるという現状では、どこかで核兵器が使用された瞬間、その正確な位置と威力(キロトン)と震度が測定されるというような監視システムが地球全体にしかれているため、すぐさまそれを特定できるのだそうです。
もしかしてトルコとイスラエルって火事場泥棒だったりして
そもそもアサド政権が崩れ去ったのにもかかわらず、イスラエルはなぜ2024年12月なかばの数日間に、シリアの「地形」が変わってしまうほどの空爆を480回以上もおこなっているのか、という質問にたいして、ネタニヤフ政権は、ハマスやヒズボラやフーシなどの「テロリスト組織」からイスラエルを守るための緩衝地帯をつくっているのだと答えています。
とはいっても、イスラエルに対する批判はいっそう強まっていますし、国際社会からの孤立を修復することはますます困難になってきているようにみうけられます。
くわえて、ロシア・ウクライナ戦争もエスカレートしてきています。
それはさすがにルール違反でしょ
2024年の11月20日に、ウクライナ軍がアメリカ製の中距離弾道ミサイルATACMSと英仏製のミサイルStorm Shadowを使ってロシア本土にある軍事基地を攻撃したせいで、第三次世界大戦開始まであと数歩というところまで悪化したことはみなさんもご存知だとおもいます。
なぜならATACMSとStorm Shadowを発射するためには米国と英国の専門家による暗号の解除が必要だということなので、米国およびNATO加盟国がロシア本土へミサイル攻撃をおこなったのとおなじことになります。
つまり、ロシアの観点からすると、米国とNATOがいっしょになってロシア本土にミサイル攻撃をおこなったことになり、米国とその同盟国が宣戦布告もなしに戦争をはじめたことにもなります。
つまり世界大戦がはじまったとみなされたわけです。
お願いですから人類を終わらせないでください
ロシア・ウクライナ戦争はもともと代理戦争だと米国の国務長官アントニー・ブリンケンも述べていましたが、海外の戦略地政学者の方々や元国際連合の武器検査官、および米国大統領の軍事顧問を務めていた方たちの書かれたものに目を通したり対談に耳をすませていると、まさに一触即発といった状況に近づいているようです。
世界終末時計(Doomsday Clock)においては人類の終わりまで残り90秒などと発表されています。
なぜかといえば、ロシア・ウクライナ戦争の『どうしようもない構図』は、そっくりそのままシリアのアサド政権崩壊事件の構図でもあるからです。
じっさいアサド政権打倒をかかげたHTSなどの反政府軍に150機ものドローンを供給していたのがウクライナの秘密情報局だったということもわかっています。
紛争と戦争の卵を産み続けるクイーンエイリアンは?
この『どうしようもない構図』は、ひとことで言えば、国際社会がBRICSのような天然資源を豊富にもっている国々による多極体制(multipolar system)へと移ろうとするのを阻止して、米国の覇権と一極支配(unipolar domination)という現状維持を図ろうとする天然資源の少ない西欧圏の支配層による「なりふり構わぬ延命策」によって成り立っているとみられています。
ある意味、BRICSに加盟している国々は発展途上国かもしれませんけれど「持てるもの」たちであり、米国の傘下にある先進7カ国(G7)といわれる国々は、わが日本もふくめて「持たざるもの」たちだということが、いっそう明確になってきたせいもあるかもしれません。
ただし米国は天然資源を多く有しているのでとうぜん立ち位置がちがいます。
しかもキャプテン・アメリカみたいなイメージを「売り」にしているのですから。
そのこととは別になりますが、BRICSへの加盟を望んでいる国々を見てみますと、過去に米国を筆頭とするG7による経済制裁に苦しめられたことのある国々が多いということもその特徴かもしれません。
ところで、ご存知のように、2024年12月8日にシリアのアサド政権は崩壊し、アルカイダのアップグレードバージョン?とも言われている「タハリール・アル・シャーム機構」(HTS)(元「ヌスラ戦線」)とISISがシリアの新政権を担当することになりました。
スタンフォード大学のフーヴァー研究所でも教鞭をとっておられた仏学者のファブリス・バランシュ氏によると、それを背後から援助していたのがCIAだということもわかっていますので、ますます世界の戦略地政学的な状況はシュールレアリスティックになってきました。
もともとアルカイダとISISは対ソ連戦略と中東の反米政府の秩序をかき乱すという目的で米国によって作られた組織だということは、シカゴ大学教授の国際政治学者ジョン・ミアシャイマーやコロンビア大学の経済学者ジェフリー・サックスによってずいぶん前から指摘されていましたし、歴史学を教えている教授たちによるCIAとそれらの「テロリスト組織」との関係についての言及もありました。
9/11のアルカイダは「善良な組織」へと変身しました
にもかかわらず、ここにきて、米国政府から9/11の同時多発テロ事件の首謀者ということでテロリスト認定された組織によってアサド政権を崩壊させるレジーム・チェンジをおこないました。
そのせいで、アサド政権交代をもくろみ、背後から糸をひいてそれを成功させたCIAは、ほんとうは『国家反逆罪』(treason)をおかしたことになるのでは? という意見もあります。
けれども、その批判を投げかけている有識人たちの声も、ニューヨークタイムズなど大手メディアが声高に流しているプロパガンダにかき消されてしまっているようです。
たとえばニューヨークタイムズやBBCの記事などに目を通してみますと、その趣旨はおよそ次のようなことではないかとおもわれます。
「わが米国へ牙をむくアルカイダは悪の組織であることはとうぜんです。ただし、われわれ米国政府が悪の枢軸 axis of evil と呼ぶ7つの国家(イラン・イラク・シリア・レバノン・リビア・スーダン・ソマリアなど)を転覆させるために戦ってくれたアルカイダは善なる組織なのです。つまり、今回、反政府軍・抵抗軍として活躍したアルカイダは生まれ変わった善き組織であり、われわれの味方なのです。なぜなら悪の国家シリアのアサド政権転覆を成功させてくれたからです。そういう意味では9/11の同時多発テロ事件でツインタワーを破壊した過去のアルカイダとは異なる組織だとみなさなければいけません。つまりアルカイダ・バージョン2.0ともいえる成熟し改善された組織がHTSなのです」
いよいよ化けの皮がはがれそうなシオニスト政権
とにかく、前に述べましたように、イスラエルはイスラエルで、パレスチナの一般市民を虐殺し、ガザ市を瓦礫にするための空爆を日々つづけながら大イスラエル(Greater Israel)の夢を実現するためにシリアへイスラエルの軍隊(IDF)をすすめ、いたるところを破壊しています。
けれどもネタニヤフ政権そのものは国内での激しい批判にさらされて崩壊寸前だともつたえられています。
くわえて欧州諸国や米国からイスラエルに移り住んでいた人々の大半が過去に暮らしていた国々へと帰国しはじめています。
また、長くイスラエルで暮らしていた人々も、現在、キプロス島やギリシャやモロッコへと移住をはじめ、そこを第2の故郷とさだめる人々の数が驚くほど増えているとも報道されています。
そのせいで戦争による経済の弱体化にくわえて、労働人口の減少によるイスラエルの国力そのものの長期的な衰退も不安のタネになっているようです。
隠されていた歴史的な思惑がぜぇ〜んぶ露出しそう
また、トルコはトルコで、国民の99%がイスラム教徒であるのにもかかわらず、同胞であるパレスチナの一般市民の惨劇には目もくれず、米国政府とイスラエルのネタニヤフ政権をサポートする形で参戦し、他のイスラム諸国からは白い目で見られているとのこと。
とはいっても、イスラエルが狙っているアレッポは、トルコにとっては歴史的(オスマン帝国時代)に自分たちのものだったということらしく、このチャンスを利用して何がなんでも手にいれたいところでしょうし、これから先、イスラエルとの関係にもひび割れが生じる可能性がひそんでいるようにおもわれます。
そんななか、HTS(アルカイダver2.0)がシリアの新政権を担当することになったせいで、自分たちにたいして断首などの残虐な殺戮行為をおこなうのではないかとおそれたシリアのキリスト教徒の大半は国外脱出を図っています。
くわえて、シリアで暮らしていたクルド人の内部分裂と闘争は国境付近においてますます酷い状況になっているようで、シリアの新政権にとっても米国にとっても頭の痛くなるような問題が山積みになっているようにしか見えません。
陰謀論とされていたものが事実に変わってしまう歴史の不思議
もともとアサド政権を崩壊させるための戦争に米国が税金を投げ出し、若い兵士たちの命を犠牲にしはじめたのは2011年からでした。
当時はオバマ大統領がその音頭をとっていました。
そのオバマ政権を影からあやつっていたのがイスラエルのネタニヤフ政権でした。
それはサウジアラビアとトルコとともにシリアを奪う計画で、当時のニューヨークタイムズでも年に数回は記事になっていました。
けれども、他の大手メディアやテレビニュース番組ではいっさい取りあげられることがなく、けっきょくは水面化でずっと推しすすめられてきた計画でもありました。
ご存知の方々にとってはおそらくかなり良く知られている軍事作戦で『ティンバー・シカモア作戦』(Operation Timber Sycamore)と呼ばれているものです。
これは2012年のころにたてられた軍事作戦で、将来、シリアに内戦を起こしてアサド大統領を権力の座からひきずりおろすために、CIAとアラブ諜報機関とのタイアップによって新武装組織をつくり、秘密裏に訓練して兵器を供給するというものでした。
戦争の卵を産み続けるクィーンエイリアンの正体は?
ところで、これらの泥沼化した中東情勢やロシア・ウクライナ戦争なのですけれど、全体のなりゆきを見下ろしたとき、その底ですべてを引き起こしているのが、じつはおどろくほどシンプルな動機だということがわかります。
ようするに、これらの紛争や局地戦争は、アメリカの支配層の方たちが、世界における自分たちの主導的立場がゆらいできたことへの「焦燥感」(あせり)から生まれてきたものなのですから。
オイルダラーによる経済支配すらもがぐらつきはじめていることが、紛争をさらに拡大化させる要因にもなっているようですし。
米国の支配層からすればお尻に火がついたような状態なのかもしれません。
ですから、いまさら方向転換しろといわれても、なかなか一筋縄にはいかないでしょうし、場合によっては、ゴリ押しの手段にうったえてきますので、ますます手に負えないものとなっています。
つまり、米国を運営している支配層の方々が、多極化してゆく世界の地政学的変化に対して「No!」という拒絶反応をしめしていると考えるのがいちばんわかりやすいかとおもわれます。
驕れるものも久しからずただ春の夢のごとし
ローマ帝国、東ローマ帝国、オスマン帝国、ロシア帝国、モンゴル帝国、大英帝国など、わたしたちヒトの歴史のなかに帝国(empire)はさまざま出現しましたけれど、過去にあらわれた帝国のほとんどは、それぞれの時代のちがい、もしくは哲学や科学技術の進歩にはかかわりなく、陸軍中将サー・ジョン・バゴット・グラブ氏の『帝国の運命と存続の探索』(The fate of empires and Search for survival)によれば、どれもおよそ300年前後で寿命がつきる、とみなされています。
帝国の勃興と衰退とその存続期間
アッシリア 859-612 B.C. 247年
ペルシア 538-330 B.C. 208年
(Cyrus and his descendants)
ギリシャ 331-100 B.C. 231年
(Alexander and his successors)
ローマ共和国 260-27 B.C. 233年
ローマ帝国 27 B.C.-A.D. 180 207年
アラブ帝国 A.D. 634-880 246年
マムルーク奴隷王朝 1250-1517 267年
オスマン帝国 1320-1570 250年
スペイン帝国 1500-1750 250年
ロマノフ家によるロシア帝国 1682-1916 234年
大英帝国 1700-1950 250年
そして、衰退してゆくひとつの帝国(empire)が、新たな帝国の勃興を食いとめることはほぼ不可能だということは歴史があきらかにした事実のひとつでもあります。
また、あるひとつの帝国が崩壊するとき、それは他の国や別の帝国など外部からの力によるものではなくて、かならずその帝国みずからの腐敗による内部崩壊(implosion)によるものだ、ということも歴史が教えてくれています。
他国からの圧力や他国との紛争などは、みずからを崖っぷちに追いやった帝国の背中を突く小指1本分の影響力にはなるだろう、というふうにみなされているようです。
江戸幕府からたくさん学んだアメリカの支配層の方たち
だからこそ、アメリカを運営している方々は、彼らが利益を得るための政策を受け入れない国にたいして「経済制裁」(economic sanction)をおこなったり、その国の国民が民主的な方法で選んだ指導者による政権にたいして「政権交代」(rigime change)をさせてきたわけなのですから。
つまり、戦闘機やミサイルやドローンや戦車や空母や潜水艦を使わなくても、昔ながらの「兵糧攻め」(ひょうりょうぜめ)と「首のすげかえ」によって相手国を自分たちの思い通りにあやつることができるという戦略をそのまま実践してきたのが、アメリカ帝国主義(American Imperialism)をかかげた支配層なのだそうです。
よく言われているように、アメリカを運営している財閥の方たちは、おそらくローマ帝国ver.2.0をめざしてきたのでしょうけれど、2021年の時点で全世界80カ国に750にもおよぶ海外軍事基地をおいている国へと成長していますので、古代ローマ帝国をはるかにしのぐ覇権をにぎっていることはまちがいありません。
これにたいしてロシアは2018年の時点で21の軍事施設を国外に保有していますが、そのほとんどは旧ソビエト連邦に属していた国々ですし、中国にいたってはキューバ・ジブチ・タジキスタンの3国となっています。
ちなみに日本には130ヶ所の米軍基地がありますので、なんらかの形で日本政府やわたしたち日本の国民が、米国がおしつけてくる政策やエリートたちの意向にそむくようなことをくわだてた場合には、すぐさまそのような反対運動をにぎりつぶすことができます。
ドイツにも119ほどの米軍基地がありますけれど、2017年以降、世界でもっとも米国の海外軍事基地を受け入れている国としては、日本が世界NO.1となっています。
このようなアメリカ帝国主義の政策にたいしては、『トム・ソーヤーの冒険』や『ハックリベリーフィンの冒険』で知られている作家のマーク・トウェインや、ニューヨーク市のカーネギー・ホールを建てた人物であり、またアメリカの支配層のひとりでもあったアンドリュー・カーネギーなども反対の立場をとっていました。
にもかかわらず、米国の主導的地位(American Primacy)を維持しようとする現在の支配層たちは、その覇権を維持するためには手段も問わないといった延命策をとっていて、そのせいで、あらゆる場所でさまざまな紛争や戦争が勃発しているのだ、という見方がアメリカの名門大学で戦略地政学や国際政治学を教えておられる学者さんたちに共通してみられる意見のようです。
つまり、人類の歴史のなかでなんどもくりかえされてきた滅びゆく帝国と新たに生まれようとする帝国との摩擦が、現在進行形でくりひろげられているのかもしれません。
そして、この摩擦から発する熱が、さまざまな場所で人工的に「小競り合い」を発生させ、それによって、なんの罪もない何十万人という一般市民の命が奪われおびやかされている、というのが現在の世界情勢のようです。
母国の次にわたしの愛したアメリカがその国の支配層のせいで崩れてしまいそう
たとえば、かつての「大英帝国」は、アメリカ・カナダ・オーストラリア・インド・エジプトをはじめとして東南アジアやアフリカなど世界中に植民地をもち、英国軍を駐屯させてそれぞれの国をおさめていました。
そこへ、大地がもたらしてくれた石油のおかげで「にわか成金」となった新興国アメリカが登場してきます。
しばらくのあいだはその若き成金と肩をならべる力を誇っていた大英帝国だったのですけれど、増やしすぎた植民地を維持できなくなっていきました。
つまり、世界中に駐屯させていた軍隊の維持費や植民地を運営するためのコストが国のお財布に穴をあけ、みるみる国力を失っていって、追い討ちをかけるように植民地では反乱があとをたたなくなり、衰退の道をたどったのです。
そのため、とくに第二次世界大戦からあと、世界の基軸通貨だったポンドの価値も徐々に弱まり、その地位をアメリカのドルに奪われてしまいます。
そのドルがこんどは基軸通貨ではなくなるのでは、という専門家たちの意見が、いま、世界中にひろがっているようです。
BRICSのまとめ役としてのロシアと中国に対する米国の覇権地図がめまぐるしく変化しているせいなのでしょう。
くわえて、アメリカの命でもある水源に悪い影響をもたらすとされるシェール・オイルの産出によって、原油生産量世界第3位のロシア、第2位のサウジアラビアを抜いて、2023年には世界第1位の座を獲得しているのですけれど、その栄誉にも翳りが見えはじめたようです。
そのためにも、これから先、戦争はつづけていくしかないでしょう。
それに、今年2025年にバイデン大統領からトランプ大統領へ指揮棒が手わたされたとしても、軍産複合体が2002年の時点で練りあげていた計画に変化がおとずれることはないとおもわれます。
ですから、もしもトランプ大統領が上から目線のマッチョな態度でイランからの交渉を拒んだ場合は、たぶん中東の大国イランとの戦争をはじめるつもりなのはまちがいありません。
そもそもアメリカが相手国と「外交」をするつもりがない態度を見せたときには、なんらかの屁理屈をこねて「先制攻撃」(preemptive strike)をしかけるつもりだということは明らかです。
そのための台本(ナラティヴ)とプロパガンダもすでに用意しているはずです。
くわえて、前回、大統領の職についたときのトランプ氏は「ほんの一瞬でもイランが核兵器を作るそぶりを見せたらこの地球上からイランという国はかんぺきに消えてなくなるだろう」というような乱暴なことばを平然と吐き出した人でもあります。
今回も、選挙費用の大部分はイスラエルのアメリカにおける最大のロビイスト団体でもあるAIPAC(エイパック)が肩代わりしたそうなので、ネタニヤフ政権が望むとおりにイランとの戦争に踏みきらざるをえないかもしれません。
それでも他の大統領とくらべた場合、トランプ氏は戦争屋さん(warmonger)ではなく、あくまでもソフトな商売人とみなされています。
とは言っても、相手国の言い分にはいっさい耳をかさず、秘密工作(covert operation)とメディア操作と軍事力という腕力によって、自分たちに利益がもたらされるように相手国をねじふせ、その国の政治・経済・文化を作り変えてきたアメリカという国における「世界最強の広告塔」でもあるのですから、すくなくともメディアに顔を出したときくらいは頼りがいのあるマッチョなヒーローを演じなければいけないのはとうぜんだとおもいます。
それが大統領の務めでもあるのですから。
けっきょく、おしまいには中国にも喧嘩を売るつもりでいるのが、いまだに「自分は世界最強の正義であり民主主義の守護人なのだ」という台本を売りつけながらお金をかせごうとするイジメっ子の代表アメリカを運営している支配層の方たちに共通した考えなのかもしれません。
「世界の終わりの始まり」を始めないで!
わたしの大好きな国、アメリカ。
アメリカで暮らしているあいだに心を通わせることのできた友だち・恋人・先生たちの思い出はかけがいのないものです。
わたしの人生のなかの10年を共にしたアメリカが、いま、その国の支配層の傲慢さと矜持と強欲さによって崩壊の一途をたどっていることはまちがいありません。
そのことに怒りと悲しみをおぼえます。
でも、いちばん苦しいのは、この地球で暮らしているひとびとすべてを、米国の人口の0.2%にも満たない数の支配層によって滅ぼされるかもしれないという危惧です。
片手の指で数えられるほどの財閥(モルガン家、デュポン家、ロックフェラー家、メロン家、カーネギー家など)とGAMA(グーグル、アップル、メタ、アマゾン)の億万長者たちによって世界の運命までもが左右されるのはうんざりです。
それだけはゆるしてほしい、と心から願っています。
広島・長崎を経験したあとの現在、核兵器はそれがいかに小さな威力のものであっても、また、射程距離のみじかい「戦術核兵器」だなどとごまかしていても、いったん核保有国にたいして使用された場合、まず絶対といってよいほど相手国からの核兵器による反撃が予想されるので、最終戦争への悪化をくいとめることは不可能だとみなされています。
怖いのは、中距離弾道ミサイルなどを相手国に打ちこんだ場合、その弾頭に入っているのが従来型の爆弾なのかそれとも核爆弾なのかは、そのミサイルが標的に着弾して爆発するまでわからないことです。
それ以上にもっと怖いのは、どこかの国から大陸間弾道ミサイル(ICBM)が発射された場合、最初の24秒前後でそのミサイルサイロの場所が特定できるのだそうですけれど、先制攻撃をしかけた国にたいして、こちらからも核弾頭をつんだミサイルによる反撃を行うのかどうかを決めるための「人間」つまり「最高責任者」に残された時間的猶予は8分30秒前後しかないらしいのです。
あとはコンピュータの仕事であって、こちらへ向かってくるミサイルの弾道を計算し、発射した場所へむかっておなじようにこちらからもミサイルを発射するという一連の作業はすべて自動で行われるのだそうです。
だからこそ、こちらの都市や街や村々が一瞬にして破壊され、たとえば、政治家や軍人をもふくむ全員が殺されてしまったとしても、ミサイルは何事もなかったかのように地球を半周し、敵国のすべてをおなじように確実に破壊することが可能なのだそうです。
1962年、米ソのにらみ合いがエスカレートしていった結果、キューバ危機という出来事がおこりました。
その事件によって世界は核戦争の一歩手前まで行ったことがあります。
そのときにジョン・F・ケネディ大統領がもっていた時間的猶予は2時間40分近くあったらしく、考える時間だけではなく、ソ連のフルシチョフ首相へ直接に電話をいれて話し合う時間的余裕もありました。
けれども、現在はその国の「最高責任者」がひとりの「人間」としてこの世界を終わらせるのか、それとも、たとえ自国は消滅しても人類そのものを救うために反撃を中止するのかという判断を下すために残されている時間的余裕はほとんどありません。
なぜなら、さきほど説明したように、どこかの国が核ミサイルを発射したとたん、こちらも自動的に核ミサイルで反撃するようにすべてがプログラムされているからです。
たとえば原子力潜水艦から核ミサイルを発射するために、受信された暗号を解読したあと、2人の責任者が同時に鍵をまわして赤いボタンを押すというような場面は、あくまでも大昔のハリウッド映画のなかでだけ見れるものです。
たったひとつ確実なことは、核兵器を使用したとたんに人類全員が「敗者」になるということです。
核兵器を使ったとたん「勝者」はいなくなるのです。
たとえば核戦争後におとずれる「核の冬」についても、その厳しい残酷な真実については現代人のほとんどが知っていますし理解しています。
そのためのNuclear Deterrence(核の抑止力:ニュークレア・デタランス)なのですから。
にもかかわらずペンタゴン(米国国防総省)に勤めておられる方たちと一部の科学者が「たとえ核兵器を使用してもアメリカは勝てる」と考えているらしく、それにたいして世界中の戦略地政学者たちが首をかしげながら「たんなるハッタリなのか脅しなのか、それとも頭がおかしくなったのか、彼らのことばの真意がまったく理解できない」と批判しているのが現状です。
専門家によりますと、最初の72分間で人類の60%が死んでしまうそうです。
だからこそ、ロシアが2024年11月21日に実験的中距離弾道ミサイル『オレシュニク』を使用したとき、発射30分前にそれが核兵器ではないことを米国とNATOにつたえていたのでしょう。
相手国とのコミュニケーションを拒否し、ひたすら自分たちの要求をつきつけていくのは「外交」ではありません。
「威嚇」です。
米国政府もロシア政府も、第3次世界大戦はありえないし「核兵器を使用することだけはぜったいにありえない」とは言っていましたけれど、事実上(デ・ファクト)すでに第3次世界大戦ははじまっているとみなされています。
もしかしたら、世界の終わりは、ほんのわずかな誤認によってもたらされるのかもしれません。
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