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  • 執筆者の写真香月葉子

女の子のオナニー | ひとりエッチの呼び方とメリットと都市伝説

更新日:8月15日


ひとりエッチ初体験

 ひとりエッチは「こころ」にとっても「からだ」にとっても良いことずくめの行為です。


 それでも、はじめてオナニー(ドイツ語)やマスターべーション(英語)ということばにふれて、じっさいにひとりエッチ(セルフプレジャー)の方法をおぼえるようになったとき、はじめて味わうその不思議でステキな快感とともに、それを楽しんだあと、なんとなく恥ずかしくなって、ほんのすこし罪の意識にとらわれたりすることがあるかもしれません。






 なぜなら、女の子の自慰(じい)にまつわるさまざまな俗説や都市伝説など、誤った考えがひとり歩きをしていて、ぐうぜんそういう情報にぶつかってしまうと、どうしてもそれが気になりはじめるからだとおもいます。


 それは女の子だけではなくて、男の子にとってもおなじで、オナニーにまつわる迷信じみた都市伝説は、さまざまあります。



オナニーに関する迷信と都市伝説 

男性のオナニーにまつわる都市伝説
  1. 視力がおとろえる

  2. 頭が禿げる

  3. 記憶力が低下する

  4. ニキビが増える

  5. 男性ホルモンが減少する

  6. 精子の数が減少する

  7. 脳みそがすこしずつ溶けていく

  8. ガンになる

 これらに科学的な根拠はありません。

 たんなる迷信です。


 けれども、集団社会のなかで生きているヒトが、みずから生みだしたモラルや禁忌(タブー)や規律というものに、いつのまにかしばられてしまうというのは、ヒトという生き物にとっては自然なことなのかもしれません。


 そんな社会のなかで生活しているのですから罪の意識はだれしもが抱くものでしょう。



 では、女の子のオナニー(self pleasure)にまつわる都市伝説とは、どんなものがあるのでしょう。


 海外の記事を調べてみますと、だいたい次のようなものがあがってきました。


女性のオナニーにまつわる都市伝説
  1. 女の子はそもそもオナニーをしない

  2. 女の子はポルノを見ない

  3. 女の子のオナニーは学んだもの、男の子のオナニーは生まれつき

  4. 性的に淫らな女の子だけがオナニーをする

  5. 恋人のいない孤独な女の子だけがオナニーをする

  6. オナニーをすると性欲がなくなってしまう

  7. バイブレーターを使っているとクリトリスが感じなくなる

  8. 女の子のオナニーはたんなる見世物(fake show)

  9. 女の子はオナニーでオーガズムを得ることはできない

  10. 処女膜がこわれてしまう

  11. オナニーをする女の子は不潔になる

  12. 子供を産めない体になってしまう

  13. 病気になりやすくなる

 どれも迷信みたいなものです。

 もちろん科学的根拠はありません。

 あの家の屋根にカラスがとまったから、あの家のだれかが近いうちに死ぬだろう、と言っているのと変わりはありません。



女の子のオナニー伝説の背後に隠されているもの

 女の子はもともとオナニーをしない生き物だ、とか、女の子はポルノは見ない、とか、恋人がいない女の子だけが自慰をする、というような都市伝説が生まれた背景には、女性はもともと性欲をもっていないし性欲があってはいけないので、女性というものは「他人から手ほどきをされてはじめて性欲をおぼえる」のがほんとうだ、という、とても古くさい男性優位社会から生み出された迷信が隠されています。


 保守的な男性がおちいりやすい『処女信仰』もそのひとつでしょう。


 つまり、女の子はセックスに関しては受動的な生き物のはずだから、みずから性欲をおぼえてセックスを求めてくるような女の子はフツーではないはずで、そういう女の子は〈あばずれ〉で〈ふしだら〉で、いわゆる〈Slut〉なのだ、という迷信がひそんでいるのだとおもいます。


 つまり、男性がセックスを望んだときにだけお相手して、望まないときにはおとなしく清楚にしていて欲しい、というご都合主義から生まれた迷信なのだとおもわれます。


 男性にとってはとても有利で便利な迷信かもしれません。


 たぶんそれは、その気にならなくてもお相手ができる女性と、その気にならなくては思うようにならない男性との、生理学的なちがいから生まれたものなのでしょう。


 いまはED薬など「いつでも、どこでも、誰とでも」お相手できるためのお薬がありますので、男性の性的能力の弱さからくる不安も解消されるでしょうし、そのような迷信もしだいに薄れていくのではないかとおもいます。


 ところで、わたしたちを不安におとしいれるこのような迷信や都市伝説とは反対に、オナニー(ひとりエッチ)をすることで得られるメリットもたくさんあります。


 しかもそれらは生理学や心理学から得られた科学的根拠のあるものばかりです。

ひとりエッチは良いことずくめ

オナニーをすることで得られるメリット
  1. ストレスを減らすことができる

  2. 睡眠をうながすことができる

  3. 精力的な活動をうながすことができる

  4. 脳内の血のめぐりを改善できる

  5. 身体的エクササイズの代わりにもなる

  6. 女性にとっては、オーガズムによってエストロゲンのレベルが増すために、美肌を作る手助けにもなる

  7. 男性にとっては、前立腺癌および前立腺肥大症のリスクを減らすことができる

  8. 脳内快感物質エンドルフィン分泌によって緊張感を軽減できる

  9. 愛のホルモンと呼ばれるオキシトシン分泌によって生理痛などを軽減できる

  10. 自分の体をより深く知ることができるようになる

  11. 自分の体をポジティヴなイメージでとらえることができるようになる

  12. 自己を肯定する態度を育てることができる

  13. 性欲を高めることができる

  14. 交際費なしに性的満足を得ることができる

  15. もっとも確実なセーフセックスでもある

 それでもまだ「なんとなく恥ずかしい」とか「なんとなくイケナイことをしているような気持ちになってしまう」という『心に痛い自責コンビネーション』を消し去ることができないのだとしたら、それはたぶんことばそのものの問題なのだとおもわれます。



ことばで変える心模様

 じつは、ここまでわたしは意図的にオナニーということばを使ってきました。


 軽めのひとりエッチということばにくらべると、ほんのすこしネガティヴな重さをお感じになったかもしれません。


 それでも自慰(じい)とか手淫(しゅいん)とか自涜(じとく)などにくらべると軽いはずですし、マスターベーションのように生真面目で大袈裟(おおげさ)な印象は持たれなかったはずです。


 俗語(スラング)もたくさんありますので、お調べになると楽しいかもしれません。


 ことばというものは、静電気がホコリを引きつけるように、たびたび使われれば使われるほど、さまざまな先入観がくっつきはじめます。


 たとえば、書いているほうも、みずから深く考えることをせずに、使いなれた「言いまわし」で逃げ切ろうとすることが多くなってきます。


 そんなことをしているうちに、歴史と時代のホコリがどんどん増えて、ことばにまつわりついてくるのだとおもいます。


 それにくわえて、日本語を学んだ方々は(諸外国の方々もふくめて)漢字そのものからイメージと意味を受け取ることができます。


 たとえば自慰でしたら、そのまま自分を慰めるという意味を読みとれますし、手淫でしたら淫らな手というイメージが浮かんでもきます。


 そのため、その文字を目にしただけで、ある種のネガティヴな印象を受けることだってあるでしょう。



 わたし自身は10歳前後にオナニーを知りました。そして、後年、小説のなかでそのときのエピソードを書いたおぼえがありますけれど、不思議なことに、『心に痛い自責コンビネーション』というものを感じた記憶がないのです。


 快感のほうが優っていたせいかもしれません。

 もしくは時代の思潮(ツァイトガイスト)のせいだったのかもしれません。


 そうは言っても、まだひとりエッチということばがなかった時代ですから、そういう気分になるたびに、耳の奥ではオナニーというささやき声が聞こえていましたし、頭のなかではそのことばを使っていました。


 それが東京の大学に通うようになって変わってしまったのです。


 ギョーム・アポリネールの書いた『ドン・ジュアン手柄話』という作品の翻訳本に出会ったおかげでした。


ギョーム・アポリネール作『ドン・ジュアン手柄話』
いまだに大切にしている『ドン・ジュアン手柄話』

 福富操(ふくとみみさお)さんのフランス語から日本語への翻訳がすばらしかったのだとおもいます。


 女学院に通っていたころに読みふけっていたジョルジュ・バタイユやピエール・ド・マンディアルグにつづいて、とてもエロティックなオナニー素材を得られたと感じて、うれしかったことをおぼえています。

prompt by 香月葉子(generated by BlueWillow)
楽しい素敵な「お手々」のすすめ

 

 その本のおしまいに、アポリネールが恋人のルーにあてた手紙が訳されていたのです。


 第1次世界大戦中にやりとりされた手紙でした。


 そのなかで、ふたりが自慰のことを「お手々(おてて)」と呼び合っていたのです。


 福富操さんの教養と才能から生まれた訳語だったのでしょうけれども、わたしはこの「お手々(おてて)」ということばを発見して感銘を受けました。


 なんて無色で可愛らしいことばなのだろう、と感激したのです。


 幼児語のようであってそうでもないし、「おてて」と発音するときの舌の動きも好きで、たった一語「て」が増えただけで、飼い犬に「お手」と命令するのとはまるでちがうニュアンスが生まれることばの魔術にもおどろかされました。


 わたしの心の世界に生じたパラダイム・シフトだったことはまちがいありません。


 それからはずっとこの「お手々(おてて)」ということばを使っています。



 残念なことに、女の子の場合は、女の子同士で恋人の話をしているときですら、自分自身はまったく性欲をもっていないようなフリをすることがほとんどで、小説や映画のなかで描かれているような、男の子同士がおたがいに〈オナニー〉について語ったり笑い話にしたりするようなことは、めったに起こらないし、むつかしいことのようにおもいます。


 わたしもそうでしたし、わたしの女ともだちもそうでした。


 でも、それはうんと昔の話です。

 いまの若い女性、そしてこれから青春をむかえようとする女の子たちには、自分の心を閉じこめているそんな古くさいドームをこわして、どこまでもひろがる青空を満喫(まんきつ)してもらいたいと願っています。


 お手々という、この無色で可愛らしいことば「お手々(おてて)」は、とても便利です。しかもノンバイナリーですらあることばなのですから、女の子同士でも、これからはもっと気軽にひとりエッチについて語りあえるようになってほしいとおもいます。


 ほんのちょっと呼び方を変えるだけで心の動きまでをも変えることができる魔法をことばはもっています。


 それに、快感を味わうことで、自分の体を大切におもって、可愛がるようになり、よりいっそうヘルシーにもなれるというのですから、こんな素晴らしいことはありません。


 こっそりと、でも、おもいきり「お手々(おてて)」を楽しんでくださいね。


 もし、家族や友人のだれかにお手々を楽しんでいる現場を見られたりするようなことがあったときには、ちょっと肩をすくめて「これも自己啓発(けいはつ)のためのエクササイズのひとつだから」と言って、ちょっぴりはじらいがちに微笑んでおきましょう。



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歌の解説のかわりに、それぞれ、歌が生まれるきっかけとなった体験を告白しています。



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